平野啓一郎さん著 「マチネの終わりに」を読んで。
平野啓一郎さんの著作を初めて読みました。
「裏・読書」で紹介されており、読んでみたくなりました。
設定は単純で40代の男女の恋愛です。
初めて会った時に、お互い深い意識下でつながりを感じます。
感覚や思考が合うと。
打算的ではなく、20代のなんとなく気が合うというふわっとした感覚とも違います。
それなりの人生経験を経て感じる、「感覚が合う」という感情。
女性の方の洋子(国際ジャーナリスト)にはリチャードという優しいフィアンセがいます。
男性の蒔野(天才ギタリスト)には献身的に尽くしてくれる早苗というマネージャーがいます。
外から見れば、お互いいい伴侶をもっているような気がします。
しかし、単に結婚するには申し分ない相手がいたとしても
人の心は単純ではないということを考えさせられます。
人と人としての惹かれ合い。
そこに男女という関係が絡みあうことで複雑な感情を生み出していきます。
ただの恋愛関係ではない、表現が難しい関係です。
シーンの表現が独特で、30ページくらいはその流れ(波)に乗るのに少し挫折しかけましたが、それを超えたあたりからどんどん物語に引き込まれました。
読書ハイみたいな状態になり一気に読みました。
イラク戦争・ユーゴスラヴィア紛争・リーマンショック・東日本大震災と社会出来事も織り交ぜながら物語は進みます。
平野さんの知識の奥深さや人の洞察力がこれでもかと詰め込まれています。
単なるエンタメ小説ではないし、恋愛小説でもない。
少し哲学的なスパイスも織り交ぜてあります。
アラフォー世代の悩み(仕事や恋愛・結婚生活)を比較的ど真ん中でついていると思います。
過去は変えることができるのだというシーンがいくつか出てきます。
人が変えられるのは現在と未来だけだと思っていたので新鮮な発見でした。
そして過去が変えられるということはこういう意味だったのだと納得できました。
平野さんってやっぱすごいんだなぁと、子供の読書感想文みたいな最後になってしまいました。